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岐阜県LRT構想の観点はなに? 先進事例から考える未来の街の在り方とは 

岐阜県が10年後の運行開始を目標とするLRT構想。議論の段階で何が観点になるのか...
LRT構想を打ち出した江崎知事(右側)とLRTのイメージ画像(左側)

 岐阜県が10年後の運行開始を目標とするLRT構想。議論の段階で何が観点になるのか、私たちの生活にどのような影響を与える可能性があるのか、先進事例から未来の街の在り方を取材しました。
 LRTとは、ライトレールトランジットの略で次世代型路面電車のことです。この構想案は7月の県議会で江崎知事が打ち出し、県では協議が始まっています。

【※江崎禎英知事】
 「未来の街づくりの目玉として、子どもからお年寄りまで、すべての人に優しく、エネルギー消費が少なく、環境に優しく、街の景観に配慮した、新たな交通システムである「LRT」。ライトレールトランジットを有力な候補として検討を始めました」

 江崎知事はLRTを魅力ある地域の「拠点」を「線」で結ぶ有効策と位置づけ、構想に着手しました。県は10年後の全線運行開始を目標にしています。
▼想定されている3つの路線
①岐阜羽島駅から県庁を通り、岐阜駅に到着する案
②岐阜駅前から金華山の下を通り長良川国際会議場を回って戻る周遊路線
③岐阜市街地から岐阜大学前・岐阜インターチェンジを結ぶ

20年前に岐阜市内を走る路面電車「名鉄岐阜市内線」

 これまでの岐阜市を振り返ると、20年前、路面電車の「名鉄岐阜市内線」が走っていました。しかし、財政難による経営圧迫、自動車交通との混雑問題などで全線が廃線。時を同じくして、岐阜市内の百貨店が閉店し、中心市街地が大きく様変わりしました。

 こうした課題の打開策としてLRTが有力候補に挙がったのです。そのLRTはどういった路面電車なのか…先進事例の栃木県を取材してきました。

提供=宇都宮市

 【※記者リポ―ト】
「段差がなくて、乗り降りがしやすいです。そしてすべての乗降口にはICカード設置がされていて、スムーズに乗り降りができます」
 構想から30年。おととし、誕生した宇都宮ライトレール。市内に新たに路線が作られ、JR宇都宮駅から終点駅までの14.6キロを結びます。動力のエネルギーはごみ処理施設からの排出されたエネルギーと太陽光発電のエネルギーで、環境に配慮されているのも特徴です。

 【※宇都宮市 佐藤栄一市長】
 「今目指しているのが、ネットワーク型コンパクトシティという人口が減っても支えやすい街を目指しています。それは宇都宮を複数のコンパクトな街に仕上げて、その中で365日生活ができる。そのために何が必要なのか、鉄道やLRTなどの地域内交通です。宇都宮市は検討したうえで、財政上LRTを導入しました。赤字になるだろう、空気しか運ばないだろうなどと心配されていましたが、1期目の決算では、すでに2億の黒字が出ています。LRTで通う人が増えたので会社の駐車場がいらなくなった。そこに新しい工場を建てて、新しく働く人が増えるなど、効果が生まれている」

 宇都宮市の整備費はおよそ684億円で、国の補助金と2つの市町で返済しますが、当初の予想よりも累計乗客数が約6カ月早く1000万人を超える好調ぶりで、返済のめどは立っているということです。

26年ぶりに宇都宮市内に誕生した宇都宮市立ゆいの杜小学校

 開業から2年、LRT沿線では、地価の上昇や高層マンションの建設・人口が増加に伴い26年ぶりに新たに小学校が誕生するなど、街が変わりつつあります。
【※宇都宮市民】
1人目「転勤族でこちらの開業を見越して、家を借りました。今までバスしかなかったので、宇都宮駅に出やすくなって、生活しやすくなりました」
2人目「住んでいるところから、1時間に1本しかなかったバス。LRTが出来てから、5分から10分おきに出ているので、すごく便利で助かっています」
3人目「(街が)全体ににぎやかになりました。最初はどれぐらい使うのかと思っていたけど、(人が)いつも乗っていて、混んでいます」

 栃木県と同じく交通手段として自動車利用者が多い岐阜県。公共交通に詳しい岐阜大学倉内文孝教授は、岐阜のLRT構想について3つの観点で議論を重ねていくことが重要だと話します。

【※岐阜大学工学部 倉内文孝教授】
 「色んな意味での障壁を考えなくてはいけない。大きなコストがかかりますので、どのように捻出していくのか。導入したコストだけでなく、ランニングコストもかかりますので、どのように賄っていくのかが議論になってきます。LRTは道路のスペースを使うことが多いはずです。自動車の利用者や周辺の住民の方が理解をしてくるかが2つ目です。作ったとして誰も使わないと全く意味がない。利用してみようと住民の人が思うことも必要です。行先に行くべき理由がないと成立しないとなれば、岐阜市内において、みんなが集まるための施設が復活できるか、考えないといけない」

 人口減少や少子高齢化など社会環境が大きく変わり、地方の課題が膨らんでいます。岐阜の街の未来を模索する時期が来ているかもしれません。

【※岐阜大学工学部 倉内文孝教授】
 「今は車があるから、「別にいいじゃん」と思う人が多いと思います。それも間違っていないと思いますけど、20年後に今住まれてるところで車が使えなくなった時に、どういう生活がイメージできるかを考えた時は、それ以外の選択肢がある世界が、この先 過ごしやすい街があると思います。我々は自分事で交通サービスを考えましょうという言い方をしていますけども、その文脈で住民に捉えていただき、行政もいろんな計画を進めていくことが大事だと思います」

 構想を打ち出した江崎知事は、どのように進めていくのでしょうか。

【※江崎禎英知事】
 「これから人を呼ぼうとしたときに、どこに人が来るのか、どんな足があればいいのか、その結果として交通状態がどのように変わるのか。シミュレーションしたうえでどんな在り方がいいのか、予算をとっています。街づくりが先で、考えています」

 一方、岐阜市民は岐阜県のLRT構想についてどれぐらい知っているのでしょうか。

【※岐阜市民】
1人目「新聞で知っています。郊外の方が動きやすいように、LRTで人の交流があっていいのでは」
2人目「微かに聞いたような気がする。浸透していないんじゃないかな」
3人目「全然知らないです。昔、(路面電車)が通ってたのは記憶にある。子どもは電車がすきなので、喜びそうです。メリットデメリットを教えてほしい」

【岐阜市民に対して、LRTの構想をどう考えているかとアンケート調査では】
どちらともいえないが48% 賛成38% 反対14%で、大多数が計画の詳細が見えず判断しかねている人が多いようにみられます。

 現在、岐阜市では実証実験進める自動運転バスとBRTいわゆる連結された高速輸送バスが走っています。そうした現状の中、県のLRT導入案が浮上した形になります。岐阜市の柴橋市長は、県が検討している架線を引かない台湾のLRTを10月下旬に視察していて、「地域特性に応じた身の丈に合ったシステムの採用が重要と感じた。需要予測をしっかりすることが大事」と慎重な姿勢を示しています。

 一方の県は、9月議会でLRT構想の調査費に3000万円を計上、今年度末をめどに岐阜市や羽島市、交通事業者・警察などの関係機関での検討体制を構築し交通システムの在り方などについて議論を進めていく方針です。

【岐阜県LRT構想 議論の観点とは?先進事例から未来の街を考える】

【岐阜県LRT構想 地域発展に向け岐大教授が提起「自動車以外の選択肢も」】

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