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「本で人とまちをつなぐ」新しい図書館像を探求 吉成信夫総合プロデューサー退任へ ぎふメディアコスモス

2015年7月にオープンした岐阜市の「みんなの森 ぎふメディアコスモス」。開館前...
ぎふメディアコスモス総合プロデューサー 吉成信夫さん=みんなの森ぎふメディアコスモス、岐阜市司町
 2015年7月にオープンした岐阜市の「みんなの森 ぎふメディアコスモス」。開館前から約9年間にわたり、施設の企画・運営に携わってきた吉成信夫総合プロデューサーが4月末で退任します。どのような施設を目指して取り組んできたのか、その道筋と退任にあたっての想いを聞きました。
 「ぎふメディアコスモス」は「知の拠点」を担う市立中央図書館、「絆の拠点」となる市民活動交流センター、「文化の拠点」となる展示ギャラリーなどが入る複合型の文化施設で、2015年7月に誕生しました。
みんなの森 ぎふメディアコスモス、岐阜市司町

<探求続けた新しい図書館像>
※吉成信夫さん
 「メディアコスモスは、市民に寄り添った滞在型図書館にするというのが初めのコンセプトで、『楽しい』という感覚をみんなが共有できるような空間にするということも、このメディアコスモス全体に張り巡らせた考え方なので、それは当初掲げた通りに広がったので、私としてはもうやり残したことはないです」
 吉成信夫さんは東京都出身の67歳。岩手県でNPO法人の代表として環境教育に携わり、2003年から2010年まで岩手県立児童館の館長を務めました。
 2015年4月に公募で岐阜市立図書館長に就任して岐阜に赴き、2020年からは総合プロデューサーとして、メディアコスモスの企画・運営を統括してきました。

<図書館長として5年 総合プロデューサーとして4年>
 吉成さんが図書館長に就任したのは4月。施設のオープンまでに与えられた時間はわずか3カ月という中で、エリアの活用方法や配置、サービスの形態などを一から決めたといいます。
※吉成信夫さん
 「この巨大なスケールと人が往来している姿を思い浮かべた時に、本を通じて人とまちが関わっていくような、そういうコミュニケートする図書館に変えていかないとこの建物とは絶対に合わないと思って。コンセプトを『本で人とまちをつなぐ図書館』と切り替えました」
 過ごし方は自由で、まるで公園のような図書館。通常の図書館では”禁止”の対象となる来場者同士の会話や赤ちゃんの泣き声も、常識的な範囲でならよしとしています。
 吉成さんは、全国でみても先進的な取り組みを次々と打ち出していきます。
 司書と子どもが交流する養成講座を企画し、”子ども司書”が本を紹介したり取材したイベントを報告したりするラジオ番組「小さな司書のラジオ局」はこれまで90回近く放送。また、大人向けには、岐阜の地域文化に詳しい専門家などから郷土の文化を学ぶ講座「おとなの夜学」を立ち上げました。
親子のグローブ
 そんな吉成さんが館内で最も気に入っているスポットが「親子のグローブ」。北欧で見た図書館を参考に、児童書コーナーの隣に芝生のようなスペースを設け、みんなで子どもを見守ることができる空間を作り上げました。
 その先進的で独創的な活動が評価され、2022年には「Library of the Year」の大賞に選ばれました。
ぎふメディアコスモス総合プロデューサー 吉成信夫さん
 「市民に寄り添った滞在型図書館」というコンセプトに、「楽しさ」という感覚を付け加えながら進めてきたという吉成さん。「やり残したことはない」と、これまでの取り組みを振り返りつつ、次世代への広がりに期待を寄せます。
※吉成信夫さん
 「次の世代の人たちが、また新しい価値観で成長させていく、必ずしも踏襲する必要はないと思いますが、基本的な方向をもっともっと枝が広がるようにやっていくんじゃないかなという期待の方が大きいので、とても幸せな形で私自身は個人としては幕が引けるというのはあります」

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