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福島県双葉町の復興の息吹 浅野撚糸双葉事業所が「ふくしま産業賞」受賞

東日本大震災からの復興を目指す福島県双葉町を「世界一のまち」にしようと挑戦を続け...
知事賞を受け取る浅野撚糸代表取締役 浅野雅己社長(写真左)=9日、福島県福島市、福島民報社

 東日本大震災からの復興を目指す福島県双葉町を「世界一のまち」にしようと挑戦を続ける浅野撚糸(本社・岐阜県安八町)が、「ふくしま経済・産業・ものづくり賞(通称:ふくしま産業賞)」の知事賞を受賞しました。

 この賞は福島民報社(本社・福島市)が主催。卓越したものづくりの技、地域活性化につながる企業活動をたたえるもので、知事賞はその中でも最高賞にあたります。

※浅野撚糸代表取締役 浅野雅己社長
 「『不退転、精いっぱい』そういう気持ちでないと、この11年間、誰も住まなかったまちで会社を成功させることはできないので、われわれにとれる最高のリスクで、最高のリターンを狙っています」

※ふくしま産業賞選考委員会 髙島英也選考委員長
 「選考の決め手は、『福島県内への影響力』『国内全体、そして世界への影響力・発信力』です。交流人口を300万人にすると言う浅野社長の志の高さに選考委員全員が感動しました」

 今回、表彰対象となった浅野撚糸双葉事業所は、2023年4月にオープン。敷地面積は約2万8000平方メートル、撚糸を作る機械を20台備えていて、2024年の4月以降は年間500トンが製造できる体制が整いました。

 ヒット商品の「エアーかおる」は2007年の発売から、すでに累計1700万枚以上を販売。工場のオープンに先がけ、双葉町の復興を願った「ダキシメテフタバ」というタオルも人気を集めています。

 双葉町の工場によって生産能力が高まったことで、ベトナムやポルトガル、中国など海外展開も視野に入れています。

<11年5カ月ぶりに帰還が許された双葉町>

 双葉町は東日本大震災による原発事故によって全町民7140人(当時)が避難を強いられ、役場機能も県外へ移されました。自治体で役場ごと県外に出たのは双葉町のみでした。

 当初、事故で飛散した放射性物質で、町面積のうち96%が帰還困難区域となり、原発周辺には除染土の中間貯蔵施設が建設されました(2022年9月時点でも85%が帰還困難区域)。

 双葉町ではJR双葉駅の周辺を復興拠点として、帰還を目指しましたが、除染やインフラ整備を優先したことから困難を極めました。

 避難指示が解除された時点では居住環境が整わないといった状況で、住めるようになったのは去年8月、震災から実に11年5カ月後のことでした。

 双葉町では避難指示解除後の5年間で、人口を2000人まで増やす目標を立てていますが、103人(2024年2月現在)にとどまっています。

<人口減少が課題の被災地、新たな産業を根付かせたい>

 浅野撚糸が第二の生産拠点として双葉町への進出を決めた背景には「人口減少の課題」がありました。

 双葉町の伊澤史朗町長は、雇用と観光の両輪で町の復興を目指す考えで、浅野撚糸の工場進出の意義と成果に期待を寄せます。

※福島県双葉町 伊澤史朗町長
 「工場進出が決まった当時は津波の後で、今、造成がようやく始まったという場所でした。何もない、非常に厳しい状況というものに関して、浅野社長や社員の皆さんが、復興への熱い思いを感じたというのがあったのかなと思います。(浅野撚糸は)非常に発信力のある会社だと考えています。一番、被災をして厳しい双葉町が、皆さんから注目していただける、関心を持っていただけるまちになる、そういう確信を持っています」

 東日本大震災から間もなく13年。双葉町の復興の息吹、象徴として、浅野撚糸への期待は高まります。

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