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洋服に似合う和傘の提案 若手職人も誕生 岐阜和傘に新しい風

日本最大の和傘産地岐阜。2022年3月には伝統的工芸品にも認定されました。普段の...
多彩な図柄の和傘が並ぶ「和傘CASA」=岐阜市湊町

 日本最大の和傘産地岐阜。2022年3月には伝統的工芸品にも認定されました。普段の生活で和傘を使う機会は少なくなっていますが、最近は洋服に合うおしゃれな和傘が提案され、現代に溶け込む形での利用も増えています。また、後継者の育成も進むなど、新たな風が吹き始めています。『フォーカスぎふ』ピックアップ(報告:白井友理 6月30日放送)

 着物と合わせて使うものという固定観念を持つ人が少なくない和傘。岐阜市湊町にあるこちらの店「和傘CASA」では岐阜和傘を日常生活に取り入れてもらえるよう、多様なデザインを取りそろえています。

※和傘CASA 河口郁美店長
 「洋服に合わせて使っていただけるような色や柄であったりとか、普段使いこれならできそうだなと思ってもらえるようなデザイン、色柄を意識して取り揃えています」

 今、一押しの傘を紹介していただきました。

 日傘『石徹白藍染和傘』

※和傘CASA 河口郁美店長
 「美濃手漉き和紙に藍染をしたもので、この模様はこの一点のみになりますので、すべて長良川流域で作ったスペシャルな1本になっています。お洋服に合わせていただいて、男女問わずお使いいただけると思います」

 洋服に合わせたり、地元の資源を使い一点ものとして付加価値を向上させたりと魅力が再発掘される岐阜和傘ですが、後継者不足が長年の課題となっています。

 岐阜市の加納地区では江戸時代後期から武士の内職として和傘づくりが推奨され、最盛期の昭和20年代には年間1500万本の傘が生産されるなど日本最大の和傘産地として栄えました。

 しかし、洋傘の普及とともに高価な和傘は日常使いで敬遠され、最盛期、岐阜に600軒ほどあった和傘問屋も現在は3軒にまで減少。職人の数も減少の一途をたどりました。

 そんな中、一筋の光が。

※和傘CASA 河口郁美店長
 「ろくろや骨を作る職人さんを募集しまして、育成が始まって、独立してっていう今現状になってきましたので大変希望をもっています」

 前田健吾さん(41)。全国に3、4人しかいない傘骨職人の1人です。地元広島で、自動車メーカーのエンジン製作に携わっていたところ偶然、岐阜のサクラ和傘に出会いました。

※前田健吾さん
 「テレビで岐阜和傘がパッと映って、こんなすごくきれいなものが岐阜にあるんだというのを知って、自分の手で美しいものを作りたいという思いがあったので」

 前田さんは、和傘の魅力について、人間の五感をすべて刺激できるところにあるといいます。

 前田さんは2020年1月、岐阜和傘を後世に繋いでいこうと岐阜和傘協会が立ち上げた後継者育成プロジェクトで3年間、傘骨づくりの技術を習得。2023年2月に、プロジェクトで初めての修了生となり、傘骨職人としての一歩を踏み出しました。

 傘骨職人は和傘に用いる部品「傘骨」を作る人で、竹を割るところから加工を行い用途に合わせた骨を製作します。

※前田健吾さん
 「ちょうどよい厚みと幅で削るのが難しいんです。きれいな表面にしないと傘を閉じたときに触る部分なので、それがぼこぼこしていると、手触りが悪くなるので」

受注は想定の3倍以上あるといいます。

 2023年5月に行われたG7広島サミット。パートナーズプログラム用に平和へ思いを込めた和傘が作られました。ここで使用された傘骨は前田さんが手掛けたものだったのです。

 岐阜和傘の将来を担う若者に岐阜和傘協会も期待を寄せています。

※岐阜和傘協会 平野明博 代表理事
 「もっともっと研さんを積んで、良い骨というか、細身という岐阜の特徴のある(骨を)作って数ももっと増やしていっていただければ」

 今後について、前田さんは意気込みを語りました。

※前田健吾さん
 「職人さんに安心して前田の骨を使いたいと言ってもらえるような信頼できるような骨を作っていきたい」

 若い職人も奮闘し、息を吹き返し始めた和傘業界。岐阜和傘の可能性に期待がふくらみます。

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