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映画「レジェンド&バタフライ」 大友啓史監督インタビュー後編

               「読むラジオ」第2話

 みなさま、こんにちは! 岐阜新聞社の神保絵利子です。
映画「レジェンド&バタフライ」大友啓史監督インタビュー後編をお届けします。
(「週刊ラジオ  聴く新聞」1月29日 記者リポートより)

神保:ネタバレしない範囲で岐阜の人だけにこっそり「レジェンド&バタフライ」の楽しみ方を教えてください。エヘヘへへへへ(*^o^*)
大友監督アハハハハハハ(^▽^) 信長の物語ってどうしても男性目線で作ってしまうんですよね。戦国時代だし、まさに戦国武将が天下統一した武将の話。どちらかというと、今までつくられた信長っていうのは男目線で、例えばライバルの武将であったり、信長の目線で見た信長像だったりするので(信長は)どうしても怖い上司、優れた敵将、油断できない、クール、戦略家、革命家、そういうキャラクターだったと思うんです。けど、今回は美濃の濃姫の目線から見た信長像。そうなると、家に帰ると偉い人でも、まさにかかあ天下だったり、だらしなかったり、ってあるじゃないですか。
神保:素の自分を見せられる場所でもある、と。
大友監督:はい、もう少し人間味があるというのかな。今回、木村拓哉さんってクールでめちゃくちゃカッコイイ人なんだけど、その木村さんがクールで部下や敵将からも恐れられるような信長を演じただけでなくてある種、弱みを見せる。しかも濃姫の前で弱みを見せ、悩み、苦しむという姿をあからさまにさらけ出しながら信長を演じていく訳です。美濃の濃姫という役割がなければ、こういう信長にならなかったと思うんですよ。そういう意味でいうと、この物語のキーポイントは「美濃を取り戻すんじゃ、おー!」の桶狭間の後の信長から始まりますし、岐阜という舞台が「スーパー重要」な位置を占めている話だと思うんですよね。
    実は、僕が映画を作る前に最初に来たのは岐阜なんですよ。岐阜でいろんな場所をグルグルとまわって、濃姫が生まれ育った土地の空気を感じようと思って美濃の山を何となく歩いてみたりだとか、当然岐阜城も登りましたし、信長ゆかりの崇福寺を訪ねて直筆の書を見たり、戦国の時代の香りをかいだりしながら、この土地で過ごした時間というのを映画の方に注ぎ込んで作っているという感じはあります。

神保:映画のロケ地も、全国各地まわられていますね。
大友監督:岐阜城跡は今、発掘で新しい姿が見え始めているじゃないですか。そこをそのまま使うわけにはいかないので、そこを見て、ベースにして、新しい岐阜城を、京都に大きなセット、オープンセットを造って再現しました。いろいろ史料を見ると、岐阜城は天守閣がある一方で岩場に朝廷の偉い人たちを接待するための施設を造っていたようで、中国によくあるんです。切り立った岩壁に木造の空中建築のようなものがあって、そういう建築を信長が造っていたんじゃないかという説がありまして。それは信長の当時の教養を示している。当時の教養というのは中国の方から来てたりするので、偉い人を接待するときに、そういう中国の景色を模した建築物を造って目を楽しませてみたんじゃないかなというのもあって、そういう建築物を京都に造りました。近年あまりないような、時代劇に見られない巨大なセットを、僕ら的には多分、見たこともないような岐阜城を実際に再現して、木村拓哉さんや綾瀬はるかさんが現場に来たときにびっくりさせてやろうと思って結構巨大なセットを造ったんですよね。それは全部岐阜をリサーチして造った感じですね。
 今回、夫婦の話。夫婦のある種、成長の物語。輿入れから始まっています。ある種の政略結婚でね、二人とも愛が最初からあった訳ではないんです。少しずつ愛を発見してその愛を育てて成熟して最期を迎えるというか、そういう話ですので、二人の愛が育っていくと同時に…。
 われわれの生活もそうじゃないですか。1DKのアパートから始まって少し生活が変わり、豊かになり、偉くなっていくと少し広い3LDKになったり、大きなマンションになったり、一軒家になったりとそこのプロセスってあるじゃないですか。住む場所に、その人の考え方とか今置かれている状況がちゃんと反映されていくもの。今回、信長と濃姫が住んだ場所を丁寧に最初から調べていきました。名古屋城(那古野城)や清洲城に始まって濃姫の生まれ故郷である岐阜の稲葉山城を信長が取り戻し、そこで二人の愛の生活が始まった。それがどんどん戦国時代で敵との戦いが激しくなっていくと濃姫との仲がどんどん悪くなってちょっと険悪な雰囲気の中、まるで氷の城のようなお城に変わり、二人が別れた後は、信長の権力を示すような天を突くような安土城を造ってというように、その都度その都度、城の有り様がどんどん変わっていく。それはまさに二人のコンディションを表しています。そうした中で岐阜城は二人の仲が良かった時代、一番良かった時代に岐阜城に戻ってきてそこで天下取りの礎を固めた。(映画で)一番分厚く描いているのは岐阜城での二人の暮らしなんですよね。

神保:岐阜でのロケというのは当初から構想にはなかったんでしょうか。
大友監督:岐阜はね、ごめんね。あの~、構想になかったというよりも基本的に東映の京都撮影所、太秦の撮影所で、そこを中心に撮影するということだったので、すみませんね。効率とかを考えると、1時間圏内ぐらいのところがメインになってくるので…(^^ゞ
神保:今後、また岐阜に来て…というのはどうでしょう?
大友監督:そうですね、ま、こういうものですよ。撮影っていうのは。何かの撮影があって、それがきっかけになって、その土地に足を運び始めて、そこでいろいろなネタを見つけて、そこでおもしろい企画、撮りたいものが見つかっていくみたいなことって、よくあることなんで。
神保:はい(^_^)
大友監督:今回おかげさまで(笑)、随分岐阜に足を運びましたので。
神保:では、よくあることが実現しそうな流れでお願いできれば!と。
大友監督:ウォッフォッフォッフォッフォッ
神保:エヘヘへへへ
大友監督:がんばりま~す♪

神保:これまで私たちが知り得た情報以外のことも、もしかしたらそうかもしれないし、こうした見方があるのか! というのを映画の中で描かれていたような気がするんですが。
大友監督:そうですね、一番分かりやすいのは濃姫ですよ。濃姫って歴史的な資料ってほとんどないですから。あまり、とっかかりがないんですよね。実際に濃姫がどうだったか っていう。そうはいっても美濃のマムシといわれた道三の娘で、道三の知略ぶりというかね、優れた武将であったことを思うと、濃姫もその血を継いでいてね。もしかしたら彼女が男に生まれていたら彼女が天下を取るような器だったかもしれない。当然、武士の娘ということは武芸もたしなんでいるでしょうし、教養もあるでしょうし、当時の普通の方に比べるとね。だからそういうことをベースにして今回、こういう女性もいたんじゃないかという、あの時代って男尊女卑であったり、夫に妻が従うというような捉え方をしがちなんだけれども、僕らが作り上げた濃姫みたいな像であれば、海の向こうに行きたい、自由を感じたい とか、新しい生き方を求めていた。取り分け道三が亡くなった後、そういう女性像っていうも、あながちあの時代とはいえ、あり得たんじゃないかと思うんですよね。その辺が、今回僕が作り上げた濃姫、信長っていうのは実はものすごくリアルなんじゃないかな、という風に最近思っていて。木村さんは信長の生まれかわりなんじゃないかと思うぐらいだし。

神保:「大友監督なら何かやってくれるんじゃないか」。時代劇の新たな風というか心をくすぐられるようなシーンもありました。そのあたりの工夫も、期待を受けての表現になったんでしょうか。
大友監督:あの、まぁ、いろんな期待は…。この仕事は、そもそもね、東映さんから「龍馬伝で大河ドラマを変えたように、るろうに剣心で邦画のアクションを変えたように、今回新しい時代劇を作ってくれませんか」というようなオファー、そういう思いが最初に東映のプロデューサーチームからビシビシ伝わってきていたので。もちろん、時代劇が少しずつなくなっていく中で新しい時代劇、時代劇が好きな人だけでなく多くの人に楽しんでもらえる時代劇を作れたらいいなとは思っていました。しかし、撮影が始まるとそこをそんなに強く意識していたというよりも、若い頃の信長と濃姫の10代ですからね。クスッと笑ってくださったシーンとかは多分、10代の若者っていうのは、自分の10代を考えても未熟であったり、愚かであったり。自分のことをよく知らない。次の織田家の当主だとは言われても、いよいよ結婚するとなると家のことばかりではなくてワクワクドキドキしてどんな子なんだろう と。きれいな濃姫だと分かると舞い上がっちゃうみたいなことも起きる。時代を超えてもそれはそうでしょ、という風に共有できる部分が人間だからあるじゃないですか。
神保:スーパーヒーローでも人間である、と。
大友監督:そうです、そうです。濃姫もそうです。濃姫のよくできた娘とはいえ、自分の女性としての魅力に気付いていない。おてんばのところもある。まだ愛を知らないということですよね。古沢良太さんの脚本もおもしろかったし、普通に10代の無邪気さとか未熟さを表現していくと、われわれがクスッと笑えるような、そういうものが映画の中に出てくるんじゃないかと思って。すごく素直な気持ちで撮ってました

神保:お話をうかがえる時間が残り3分だという合図が2分ほど前にありました。
大友監督:ワハハハハハハ 神保:アハハハハハハ

大友啓史監督から、岐阜新聞読者の方にメッセージをいただきました。

「今回のレジェンド&バタフライは信長を主人公にした物語ですが、岐阜出身の濃姫の目線から見た新しい物語になっているかと思います。映画を見ていただければ分かりますが、たっぷり岐阜での二人の様子が魅力的に映画の中で描かれていると思いますので、ぜひ映画を大画面でお楽しみください」

 前回のブログで記しましたが、「週刊ラジオ 聴く新聞」リスナーの皆さんへのメッセージもくださっています。多様な表現で岐阜のみなさんに映画の魅力を伝えてくださる大友監督。「週刊ラジオ 聴く新聞」に遊びに来てください! とお願いをしたら「いいですよ~」とおっしゃっていただいたのは社交辞令かもしれませんが、読者、リスナーの皆さんと、大友啓史監督、木村拓哉さん、綾瀬はるかさん、伊藤英明さんの 岐阜への〝お帰り〟を待ちたいと思います。

岐阜城は信長と濃姫の仲が良かった時代」「(映画で)一番分厚く描いているのは岐阜城での二人の暮らし」 大友啓史監督へのインタビューをおもいだしながら岐阜城を撮影しました。映画「レジェンド&バタフライ」を見てから来た!という方にも出会いました。満月との組み合わせ写真も注目される岐阜城です。

2月5日の「週刊ラジオ 聴く新聞」は「第7回かべ新聞コンクール」最優秀賞受賞者にインタビューしました。「読むラジオ」第3話で紹介する予定です。ブログの更新、もうちょぼっと待っとってください。

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